「おーい、純。純さーん!」
「っんだよ。うるせーな」
「あらやだ冷たい」
「久しぶりの休みなんだから静かにテレビみせろ!」
「まるで疲れきったサラリーマンの台詞だね」
「訳わかんねぇ」
「訳わかんないのどっちよ」
「あ?」
「なんでもないでーす」
久しぶりの休みに純がうちに来た。もちろんさそったのは私。最近練習ばっかでデートもなにもしてなかったから寂しさのあまりによんでしまったのだけれど、当の純は最初から乗り気じゃなかったらしい。今だって私をほったらかしてテレビみてやがるよコノあんぽんたん!疲れてるのは分かるよ。久しぶりの休みだから一日中ゆっくり体を休めたい気持ちも分かるよ。でもね、私だって久しぶりの休みだからこそかまってほしかったんだよ!今日は家に両親いないし何されてもおっけーなんですよ純さん(私だって一人の女の子ですもの)でも純はその気なしかよムードねーなー。ちょっと腹が立ったからベッドによりかかって体育座りをしてふくれてみせた。純は見向きもしやしない。なにこの切なさ!部屋中に響き渡るテレビの笑い声が妙に耳に入ってきていっそう私を苛々させた。こっちがこんな切ない思いしてんのに笑ってんじゃないよ芸能人!
純があまりにもかまってくれないもんだから背中を雑誌ではたいたり顔をつねったりしてみた。すんごい不機嫌そうな顔で私を睨みつけると、いつものように怒鳴ってくるのかと思ったらすぐにテレビの方に向き直ってしまった。何気にショックがでかかった。これってちょっと無視はいってますよね?目を合わせたとたんにそむけるし、いつもより二人の距離遠いし・・・。一応私たちお付き合いしてるんだし甘いひと時過ごしたいとか思うの普通じゃないのかな。
「純、今日私と会いたくなかった?」
「っんだよ、いきなり」
「私のこと嫌いになった?」
「は?」
「純のファンは可愛い子多いから目移りしちゃうのも無理ないよねー」
嫌味たらしく、そんなことを言ってみた。部屋に流れるなんともいえない微妙な空気。純はなんにも言い返してこなかった。どうしていつもみたいに怒鳴ってくれないんだろ?ほんとーに目移りしちゃったのかな。純のファンは可愛い子が本当に多いんだ(てか野球部員のファン自体が可愛い子多すぎなんだけど)そんなかに私は埋もれて見えなくなっちゃったのかしら。
目の前がぼやけて純の顔が見えなかった。私きっと今すんごい酷い顔してるよ。むかつくし、悲しいし、悔しいし、どうしようもなくて絶対めちゃくちゃブサイクになってるよ。全部純のせいだ!私は近くにあったクッションを思いきり純に投げつけた。そのクッションは純の顔にクリーンヒットしたらしく「むぐっ」というとても情けない声が聞こえてきた。
「純はすごすぎるから私なんかが彼女じゃ物足りたいんでしょ」
「?」
「今日、純に久しぶりに会えるからウキウキしてたのに一人で馬鹿みたいじゃん」
「・・・・」
「私はずっと純がほしくてほしくてたまらなかったのに、純は違ったの?」
「・・・・」
「なんのために親がいないときにうちに連れ込んだと思ってんのよ・・・」
「お前・・・」
「乙女心踏みにじってんじゃねーボケェェェェェエ!!」
「!!?」
私は大泣きしながらクッション(二つ目)を純に放り投げた。さっきまでしくしくと女の子らしく泣いていたのに突然キレたので純も吃驚したらしく目が見開いていた。でも今度はちゃんとクッションをキャッチしていた。一回目より強く投げたのにあっさりと。きっと行動パターン最初ので読まれたんだと思う。
思い切りキレて、思い切りクッションを投げたおかげで私は少し落ち着いた。(はぁースッキリしたぁ)・・・と、純をみたら、純の怒りは最高潮にたっしてしまったらしく顔が・・・・顔が、あの、なんとも表現しがたい・・・あ、こ、怖いです。手にはクッションが今から私の方に向かいますといわんばかりにスタンバイがしてあった。冷静になって考えた。・・・私が純に勝てるはずがない・・・
純の投げるクッションはきっと半端なく痛いんだろうね!私は投げられる気満々で目を瞑った。さぁ、いつでもきなさいよ!と意気込みはいいが内心ガタガタで手もガタガと震えていた(だって女の子だもん!)
でもいつまでたっても顔にも体にも痛みは走らなくて、かわりに体がしめつけられる感じがして、一体なにが起こったのか訳がわからず目もあけようともしないで一人でパニックに陥っていた。
「ななななななな・・・・!」
「なに一人でパニックおこしんだよボケ。目あけろ」
「えええええ」
「早くしろ!」
言われるまま、ゆっくりと目をあけると映った光景は私の部屋。でもちょっと横向いたら純の髪の毛で、頬にあたってくすぐったかった。すぐ近くで純の匂いがして(かなりいい匂い)心地よくなってしまった。わーわー!私もしかして純にぎゅってされてる?ぎゅーってされてる?今の状況に気づいて、嬉しくて恥ずかしくて変な奇声をあげながら喜んで純の背中をバンバン叩いていると「嫌なんだか嬉しいんだかはっきりしやがれ!」て怒られた。嫌な訳がない。純はそんなこと絶対知ってるのに言ってくるからこれまた照れる。純はヘタレだから今絶対に顔真っ赤だよ!(言ってる私も真っ赤だけどね)
顔を見てやろうと純から少し体を離すと、顔を見る前に、その顔が急接近してまともに見られることができずに、かわりに唇に柔らかい感触がした。驚く間もなく、純は顔を見せようともしないで私をまたぎゅっとした。「ひゃー・・・」という私の変な声も純は聞こえないフリをした。
「俺もうあんだけ言われて我慢できねーからな」
「え」
「『ほしい』とか『なんのとめに親がいないときに連れ込んだ』とか!」
「あー」
「っんだよその反応」
「ごめん幸せすぎて反応の仕方わかんない」
「あーそうかよ」
「うん、そうだよ。てかなんであんなに冷たかったの?」
「それは・・・・」
「それは・・・?」
「俺もがほしすぎてなにするかわかんなかったから」
あーもう馬鹿だなぁ。なにしてもいいに決まってるじゃん。私はずっとずっとあなたがほしくてたまらなかったのだから、あなたももっと私のことほしがればいいよ。私なしじゃ生きられない子になればいいよ。
「あーもうやべー」
ははは、私だってやべーよ。心臓壊れそう。
純はまた私と唇をかさねて、そのまま床に押し倒した。
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