夏祭りに行きたい、とがいきなり言い出した。理由は?と問うと「新しい浴衣買ったから」とにこにことしながら返事が返ってきた。俺と行きたいからじゃねーのかよなんてちょっとスネたふりしたら、頭を優しく撫でながら「御幸だから新しい浴衣着て一緒に夏祭り行きたいんだよ」何コイツまじでかわいい!がばっと抱きついたら今度ははたかれた。でもまぁそういうとこもかなり愛しい(俺は自分が思っている以上ににはまってるらしい)
そして当日、いつもデートのときになにかと立ち寄る公園で待ち合わせをした。は待ち合わせの時間が10分過ぎても来ない。携帯つながんねーし!女の子だから色々用意もあるだろう、仕方ないけど連絡のひとつぐらいしてくれてもいいと思う。

「御幸!」
「あ・・・・」
「ごめんー!浴衣着るのに手間取った」

携帯のディスプレイ見つめてたら後ろから足音と同時にの声も聞こえてきた。小走りしてきたのか、少し息が切れていた。は紫を土台に白い花がたくさん描かれている浴衣を着ていた。帯は黒。肌の白いにその浴衣はすごく栄えていた。いつも髪を結ばないけど、今日は結んでいて雰囲気がいつもと全然違った。てかなんかセクシーだよ。やべー俺今日耐えられるか?

「なに人の顔ずっとみてんの」
「いや、すげー色っぽいって思って」
「またそういうこと・・・!」
「本気だし」
「もうやめてよ」
「はっはっはっ、ほら、祭りいくんだろ?」
「あ・・・うん!」

俺が手を差し出すとは俺よりも一回り近く小さい手をその上にのせて、お互いに握りあった。の身長は別に大きいわけでもないけど、小さいわけでもない。でも俺よりかは全然小さいから、歩幅も全然違うわけで、浴衣を着ているせいでもあるのか、俺の歩くペースに合わせてが小走り気味に横をぴったりとくっついて歩いていた。必死に俺の横を歩こうとするはまじでかわいいと思う。そんなをずっと見ていたいけどいじわるすると可哀想だから、に合わせて歩くペースを落とした。それに気づいたのか、チラッと俺の顔を見たのが分かった。けど、すごくに俯いて何も言わずにただ黙って歩き続けた。俺も横目にのことを見た。この角度からみるがすげー好きで、すげー可愛い。白いうなじが見えて今にも噛み付きたくなってしまう自分の理性を抑えるのにとても必死なっていたことは誰にもいえない。


屋台まわって焼きそばとかワタ飴とかいろんなもん食って、神社でなんとなくお参りしてみたりして、花火の時間がちかかったからそのままその神社で花火をみることにした。神社は人が少なかった。みんなもっと別な穴場にいってるんだろう。川原の近くに大きい橋があって、そこが一番花火が見える場所だからきっとみんなそこにいっている。相当な数の人が集まっているんだろうなと考えるだけでだるくなった。木の葉っぱの影に隠れてちょっと花火は見づらかったけど、別にここも悪くないと思った。「来年もここで花火みよっか」にこにこ笑うも同じこと考えてた。花火を見ているよりもの横顔をみているほうが俺は全然たのしかった。
花火が終わって、一斉に帰りだす。一種のラッシュみたいなもんが起こる。が人ごみにさらわれない様にしっかりと手を握り締める。は電車だから、駅まで送ることにした。絶対こいつ一人じゃ危ねーし!てか俺がまだ一緒にいたいだけなんだけど。駅もすごい人ごみだった。どの電車も満員なことが予想された。の顔がげっそりしていた。電車に乗るのがあからさまに嫌そーな顔してる。そりゃ、そうだ。俺だってこの人の数には嫌になってくる。

「あーあ、電車乗るのいやだなぁ・・・」
「こんなひと多かったらどさくさ紛れに痴漢にあっちゃうかもな」
「げーっ、ただでさえこの人ごみ見て疲れてるのに痴漢とかあったら私死んじゃう」
「まぁに痴漢する奴なんかいたら俺が殺してやるけど」
「殺すって・・・」
「はっはっはっ、冗談冗談。そこまでやんねーけど、そんなことする奴いたら俺は絶対ゆるさねーよ。は俺が守るって付き合ったときから決めてるし!」
「よくもそんな恥ずかしいことをスラッと言えるね」
「俺を誰だと思ってる?御幸様だよ?て、ことで今日は俺はのために電車に一緒に乗ってやる」
「は!?」
「ほら、行くぞ」

の意見なんて全く聞かずに手を引っ張り改札を通り抜ける。(実は切符は事前に買ってあった)寮に帰るのにの乗る電車に乗れば逆方向で遠くなるのはわかっていた。もそのこと知ってるから驚いてた、のと同時に照れてるのか頬がほんのり赤くなっていた。ほんとーにきゅんってなった。なんて可愛い奴!
窓から見える電車の車内には予想してた以上の人がぎゅうぎゅうに押し込まれていた。その光景に唖然としながら「御幸ほんとに帰っていいよ。こんなんに乗せるのほんと悪いから」とがさぞ申し訳なさそうに言ってきたけど、俺には関係なかった。俺はニッと笑ってと半ば強引に車内へと入っていった。

「うわっ、熱気がやばい・・・」
「ちょっ、御幸!降りていーよ。てか降りて、ほんとに!」
「その言い方ちょっと傷つく」
「そんなこと言ってる場合じゃ・・・」

プシュー・・・・

「あ・・・・・・・!」
「閉まっちゃったな」
「・・・・・・馬鹿なんだから」
「知ってる」

電車が動き出した。ゆっくりゆっくりと走り出して、だんだんと速度を上げていく。電車が揺れ動く度に人も右に、左に、と体を揺らせていた。がドアにもたれかかって、俺はつり革につかまってを見下ろすかたちになった。この人の数のおかげで俺達の体は密着。だけど、他の奴が俺達の体に密着しているのも事実。の隣にはたまたま同じ年ぐらいの男が立っていてなんかムカついた。電車が左右に動くたびにそいつとくっついて、苛々してくる。の顔も自然といい顔にはなっていなかった。もちろん俺もいい顔はしていない。イライライライライライライライライライライライライライラ
そんな状況の中、電車が激しく揺れて、これ以上この男をと密着させるものかとバランスを崩したふりをして、に覆いかぶさった。素早く顔をあげて、「大丈夫?」なんてそれ反則。かわいいから。かわいすぎるから。我慢できねーから。今日まだなんもしてねーし!いきおいでそのままに抱きついた。

「なにしてんの!?」
「ごめん俺もう無理」
「人いっぱい乗ってるんだよ!?恥ずかしいから離して」
「離せない。目の前で他の男とべったりされて離せる訳ねーじゃん」
「だって満員なんだから仕方ないでしょ」
「でも無理」
「・・・・ほんと馬鹿・・・・・」
「知ってるって」

俺たちはそのままの状態でずっと電車に乗っていた。はちょっと不満そうな顔してたけど、俺は満足。浴衣姿のを目の前になにもしないで帰るのは生き地獄の他なにもない。ここが密室なら襲ってしまいたい(て、思ってるのは初花には内緒)

15分ぐらいして目的の駅に着いた。電車から降りるとやっとあの人の多さから開放されたというようにが深いため息のようなものをついた。

「お疲れ」
「ほんとだよ。御幸があんなことするから」
「俺のせい!?」

「でもまぁ私も御幸と他の女の人がべったりしてて苛々してたから」

「え?」

「お互い様だよ御幸」

くるりと振り返って俺に背を向けてるけどバレバレだよ。ちゃん。耳まで真っ赤になってる。思わずまた抱きついたけど、今度はなにひとつ文句言われなかった。


あーもうこいつほんとどうしてやろうか





浴衣×少年